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縮尺と寸法表記
数メートルから数十メートルの建物を、図面では縮めて描きます。その縮め方が縮尺。そして実物の大きさを正しく読み取れるよう、寸法は決まった作法で書き込まれます。1/100 と 1/50 の使い分け、mm 基準の慣例、面積の表し方を整理します。
この記事の要点
- 縮尺は実寸を図面上で何分の一に縮めたか。1/100・1/50・1/30 など、図面の目的で使い分ける
- 分母が小さいほど細部まで描ける。配置図は小さく、詳細図は大きい縮尺
- 換算は 実寸 ÷ 分母 = 図面上の長さ。1/50 なら実寸 1000mm が図面上 20mm、1/100 なら 10mm
- 建築の寸法は原則 mm(ミリメートル)基準。図面上の数値に単位は付けないことが多い。面積は m²(平米)で表す
- BIM ではモデルは実寸で作り、出力時に縮尺を指定する。縮尺は「見せ方」の設定にあたる
先に結論だけ書くと、縮尺の換算は 実寸 ÷ 分母 = 図面上の長さ、図面上の長さ × 分母 = 実寸 の 2 つだけです。1/50 の図面では実寸 1000mm が図面上 20mm、1/100 の図面では 10mm になります。図面に書かれた「S=1/100」の S は Scale(尺度)の頭文字で、その図が 100 分の 1 で描かれていることを表します。
建築物は数メートルから数十メートルの大きさがあるため、図面では実物を縮めて描きます。その縮め方が 縮尺 です。また、図面から実際の大きさを読み取れるよう、寸法が決まった作法で書き込まれます。BIM ではモデル自体は実寸で持ち、縮尺は出力(図面化)時の設定にすぎない、という関係を押さえておくと、寸法データの扱いを誤りません。本記事では縮尺の使い分けと寸法表記の基礎を整理します。
1縮尺とは — 1/100・1/50・1/30の使い分け
縮尺は「図面上の長さ : 実際の長さ」の比です。たとえば 1/100 は、実物 100mm を図面上で 1mm に縮めて描くことを意味します。分母が小さいほど図面上では大きく描かれ、細部まで表現できます。目的によって縮尺を使い分けます。
| 縮尺 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1/500〜1/200 | 配置図・敷地図 | 敷地全体や建物の位置を俯瞰。細部は描かない |
| 1/100 | 平面図・立面図・断面図 | 建物全体を1枚に収める標準的な縮尺 |
| 1/50 | 平面詳細図・矩計図 | 1/100 より細かい納まりを表現できる |
| 1/30〜1/20 | 部分詳細図 | 窓まわり・階段など、納まりを細かく描く |
| 1/10〜1/1 | 詳細図・原寸図 | 金物や取り合いを実物大に近い精度で描く |
同じ建物でも、全体を示す配置図は小さい縮尺、納まりを示す詳細図は大きい縮尺で描きます。1枚の図面に複数の縮尺を併記する場合もあるため、各図には「S=1/100」のように縮尺が明記されます。なお「縮尺が大きい・小さい」という言い方は混乱のもとです。1/50 は 1/100 より分母が小さく、図面上では大きく描かれるため「縮尺が大きい」と言います。分母の数字の大小と、縮尺の大小が逆になる点に注意してください。図面を読むときは、まず縮尺表記を確認し、図面上の長さに縮尺の分母を掛けて実寸を見積もる感覚を持つと、寸法のスケール感を誤りません。
2「S=1/100」とは — 尺度の書き方と JIS の推奨尺度
図面の隅や表題欄にある S=1/100 の「S」は Scale(尺度)の頭文字です。つまり「この図はすべて 100 分の 1 で描いてある」という宣言で、SCALE 1:100、単に 1/100 と書かれることもあります。意味はどれも同じです。
JIS Z 8314(製図―尺度)では、尺度を「A : B」の形で表すと定めています。A が図面上の長さ、B が実物の長さです。現尺は 1:1、倍尺は ×:1、縮尺は 1:× と書き、誤読のおそれがなければ「尺度」の文字は省略できます。図面に用いる尺度は表題欄に示し、1 枚の図面に複数の尺度が混在する場合は、主となる尺度だけを表題欄に書いて、他は各図のそばに添えます。
| 区分 | JIS Z 8314 の推奨尺度 |
|---|---|
| 倍尺 | 50:1 / 20:1 / 10:1 / 5:1 / 2:1 |
| 現尺 | 1:1 |
| 縮尺 | 1:2 / 1:5 / 1:10 / 1:20 / 1:50 / 1:100 / 1:200 / 1:500 / 1:1000 / 1:2000 / 1:5000 / 1:10000 |
建築でよく見る 1/30 や 1/40 はこの推奨尺度の表には並んでいません。これらは中間の尺度にあたり、矩計図や部分詳細図など「1/50 では粗く、1/20 では紙に収まらない」場面で実務的に使われています。推奨尺度から選べるならそちらを優先する、というのが原則です。
3図面上の長さ ⇄ 実寸の換算早見表
換算はどちらも掛け算・割り算ひとつです。実寸 ÷ 分母 = 図面上の長さ、図面上の長さ × 分母 = 実寸。1/50 の図面なら、実寸 1000mm は図面上 20mm、図面上で測った 20mm は実寸 1000mm ということです。
| 実寸 | 1/20 | 1/30 | 1/50 | 1/100 | 1/200 |
|---|---|---|---|---|---|
| 910mm (半間) | 45.5mm | 30.3mm | 18.2mm | 9.1mm | 4.6mm |
| 1820mm (一間) | 91.0mm | 60.7mm | 36.4mm | 18.2mm | 9.1mm |
| 2400mm (天井高) | 120.0mm | 80.0mm | 48.0mm | 24.0mm | 12.0mm |
| 3640mm | 182.0mm | 121.3mm | 72.8mm | 36.4mm | 18.2mm |
| 5460mm | 273.0mm | 182.0mm | 109.2mm | 54.6mm | 27.3mm |
| 10m | 500.0mm | 333.3mm | 200.0mm | 100.0mm | 50.0mm |
逆に、図面の上でスケールを当てて測った長さから実寸を出すときは分母を掛けます。1/100 の図面で 37mm なら実寸 3700mm、1/50 の図面で同じ 37mm なら実寸 1850mm です。同じ長さでも縮尺が違えば実寸は 2 倍違うので、測る前に必ず表題欄の尺度を確認します。
| 図面上 | 1/20 | 1/50 | 1/100 | 1/200 | 1/500 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1mm | 20mm | 50mm | 100mm | 200mm | 500mm |
| 10mm | 200mm | 500mm | 1.0m | 2.0m | 5.0m |
| 50mm | 1.0m | 2.5m | 5.0m | 10.0m | 25.0m |
| 100mm | 2.0m | 5.0m | 10.0m | 20.0m | 50.0m |
この計算を毎回しなくて済むように使うのが 三角スケール です。断面が三角形で 3 面 × 各 2 目盛り、合わせて 6 種類の縮尺が刻まれており、建築用は 1/100・1/200・1/300・1/400・1/500・1/600 の組み合わせが一般的です。1/50 の図面を読むときは 1/500 の目盛りを当てて数値を 10 分の 1 に読む、といった読み替えで対応します。
41/100 の図面を 1/50 にするには
縮尺を変えるときに効いてくるのは、長さは比のとおりに変わるが、面積はその 2 乗で変わるという点です。1/100 から 1/50 にすると分母が半分になるので、図面上の長さはすべて 2 倍、紙の上で占める面積は 4 倍になります。
| 変更 | 長さ | 面積 | 印刷倍率 |
|---|---|---|---|
| 1/100 → 1/50 | 2 倍 | 4 倍 | 200% |
| 1/50 → 1/100 | 1/2 | 1/4 | 50% |
| 1/100 → 1/200 | 1/2 | 1/4 | 50% |
| 1/200 → 1/50 | 4 倍 | 16 倍 | 400% |
そのため、1/100 で A4 に収まっていた図は 1/50 にすると面積 4 倍、つまり A2 相当の紙が必要になります。用紙サイズは 1 段階上がるごとに面積が 2 倍なので、A4 → A3 → A2 と 2 段階上げる計算です。コピー機で拡大する場合は倍率 200%(A4 → A2 は「A4 → A3」を 2 回、または A2 用紙に 200%)になります。
ただし、拡大コピーで作った図面は正式な 1/50 の図面にはなりません。線の太さや文字の大きさも一緒に 2 倍になり、1/50 で本来描き込むべき下地・断熱材・金物といった情報は増えないためです。縮尺を上げる目的は「大きく見せる」ことではなく「細かく描く」ことなので、詳細図が必要なら描き直すか、BIM であればビューの尺度を変えたうえで詳細レベルを上げます。
寸法値そのものは縮尺を変えても変わりません。図面に書かれる数値は常に実寸(mm)だからです。1/100 でも 1/50 でも「3640」は 3640mm を指します。縮尺で変わるのは紙の上での見た目の長さだけ、という区別を押さえておくと、図面のやり取りで取り違えません。
5mm基準と寸法の表記
建築図面の寸法は、原則として mm(ミリメートル) を単位とします。図面上の数値には単位記号を付けず、「3640」とあれば 3640mm(=3.64m)を意味するのが慣例です。これは桁の小さい cm や m を混在させると読み違いが起きるためで、設計から施工まで一貫して mm でやり取りします。
寸法は次の要素で表記されます。
寸法を測る向きに引く線。両端を矢印や斜線(フィート・スラッシュ)で示す。
測る対象の端から寸法線まで引く細い線。
寸法線に沿って書く数値。mm 単位の整数で書くのが基本。
柱間隔のような基準寸法には、日本の在来工法でよく使う 910mm(半間)・1820mm(一間) といったモジュール(基準寸法)が現れます。これらは畳や建材の規格寸法に対応しており、平面図の寸法を読むと建物の割り付けの意図が見えてきます。また寸法の累計を示す方法には、隣り合う部分ごとの寸法を並べる「直列寸法」と、共通の基準点からの距離を重ねて示す「並列寸法(累進寸法)」があり、図面では両者を層状に併記して、細部の寸法と全体の通り芯間隔を同時に読み取れるようにしています。
寸法値を読むときは、その寸法が「どこからどこまで」を指しているかを寸法補助線でたどることが大切です。壁の中心どうしの寸法(芯々寸法)なのか、壁の内側どうしの寸法(内法寸法)なのかで、同じ部屋でも数値が変わります。部屋の有効な広さを知りたいときは内法寸法、構造の架構を知りたいときは芯々寸法と、目的に応じて読み分けます。
6面積の表記
長さは mm で表す一方、面積は m²(平方メートル、平米) で表します。長さの mm と面積の m² で単位系が変わるため、図面から面積を計算するときは桁の扱いに注意が必要です。たとえば 3640mm × 2730mm の部屋なら、いったん m に直して 3.64m × 2.73m ≒ 9.93m² と求めます。建築では特に次の面積が重要です。
| 面積 | 意味 |
|---|---|
| 建築面積 | 建物を真上から見たときの水平投影面積(おおむね1階の外周で囲まれた面積) |
| 延床面積(延べ面積) | 各階の床面積を合計した面積 |
| 敷地面積 | 建物が建つ土地の面積 |
これらの面積は、容積率や建蔽率の計算に直結します。図面の面積表(求積表)には、各室や各階の面積が算定根拠とともに記載されます。容積率・建蔽率との関係は 用途地域・容積率・建蔽率 を参照してください。
BIM では「実寸で唯一、縮尺は見せ方」
BIM では、モデルは常に 実寸 で作成します。柱や壁は実際の mm 寸法で配置され、縮尺という概念はモデル自体には存在しません。縮尺は、モデルから図面(ビュー)を切り出して印刷・出力するときに「このビューは 1/100 で表示する」と指定する設定にあたります。そのため寸法もモデルの実寸から自動で算出され、寸法の食い違いはモデル側のズレを示すシグナルになります。
1/100 のビューでは省略する細部を、1/20 の詳細ビューでは表示する、といった制御は BIM でも必要です。Revit などではビューの詳細レベル(粗い・標準・詳細)で同じモデルから縮尺に応じた見え方を作り分けます。なお、建築の図面が mm 基準である一方、3D ソフトの内部では m(メートル)でジオメトリを持つことがあり、連携時に 1000 倍・1000 分の1 のスケールずれが起きやすい点には注意が必要です。
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