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オブジェクトモデル — Base とハッシュ
Speckle が扱うデータの中身。すべては Base オブジェクトを基底とした構造化データで、動的にプロパティを足し、内容ハッシュ(id)で重複を排除します。detach・シリアライズの仕組みまでを整理します。
この記事の要点
- Speckle のデータはすべて Base オブジェクトを基底とした構造化データである
- Base は動的にプロパティを追加でき、型は
speckle_typeで識別される - 大きな子要素は detach(分離)して別オブジェクトとして保存し、参照でつなぐ
- 各オブジェクトは内容から決まるハッシュ(id)を持ち、同一内容は重複排除される
- このモデルにより、Revit のファミリなどツール固有の要素を共通形式で表現できる
この記事は Speckle が扱うデータの中身、すなわちオブジェクトモデルを解説します。アーキテクチャ でいう「Version が指すオブジェクトツリー」の中身にあたります。
1Base オブジェクト
Speckle のデータモデルの基底は Base というオブジェクトです。点・線・壁・部屋・パラメータの集合など、Speckle が扱うあらゆるデータは Base を継承(あるいは Base そのもの)として表現されます。SDK 上では Base クラスのインスタンスとして生成・操作します。
Base は「プロパティの入れ物」であり、子に別の Base を持たせることでツリー状にデータを組み立てられます。ルートとなる Base から子要素へとたどることで、モデル全体が表現されます。
2動的プロパティと speckle_type
Base の特徴は、あらかじめ決められた固定のフィールドだけでなく、動的にプロパティを追加できる点です。たとえば壁オブジェクトに「材質」「高さ」「Revit のパラメータ群」などを自由に持たせられます。
各オブジェクトには speckle_type というプロパティがあり、これがそのオブジェクトの種類を表す識別子になります。たとえば幾何の点や線、あるいは各コネクタが定義する要素型などが、この speckle_type で区別されます。受け取る側は speckle_type を手がかりに、適切なネイティブ要素へ変換します。
| 概念 | 意味 |
|---|---|
| Base | すべてのオブジェクトの基底クラス |
| 動的プロパティ | 実行時に自由に追加できる属性 |
| speckle_type | オブジェクトの種類を表す型識別子 |
| id | 内容から計算されるハッシュ(一意な指紋) |
3detach(分離)と参照
1 つのモデルには大量の要素が含まれます。これを 1 つの巨大なオブジェクトとして丸ごと保存すると、少し変えただけでも全体を再保存することになり非効率です。そこで Speckle は detach(デタッチ=分離) という仕組みを持ちます。
- 大きな子要素や繰り返し使われる要素を、親オブジェクトの中に埋め込むのではなく、独立したオブジェクトとして別保存する。
- 親は、その子を「参照(id を指すポインタ)」として持つ。
- これにより、変わっていない部分は再保存されず、変わった部分のオブジェクトだけが新規に保存される。
SDK では、プロパティ名の付け方や属性指定によって detach するかどうかを制御できます。大量要素を扱う実装では、適切に detach することで転送量とストレージを節約できます。
4ハッシュとデータ重複排除
各オブジェクトの id は、そのオブジェクトの内容から計算されるハッシュです。内容が同じであれば同じ id になり、内容が変われば別の id になります。Git のオブジェクトが内容ハッシュで管理されるのと同じ発想です。
同じ建具を 100 個送ったら?
内容ハッシュによって、データの重複排除(dedup) が自然に行えます。たとえば 100 個の同じ建具を送っても、内容が同一なら実体は 1 つだけ保存され、それを 100 箇所から参照する形になります。バージョンを重ねても、変わっていないオブジェクトは再送・再保存されないため、ストレージと転送が効率化されます。これが アーキテクチャ で触れたバージョン管理の効率の裏側にあります。
5シリアライズ
Base オブジェクトのツリーは、保存・転送のために シリアライズ(直列化)されます。Speckle ではオブジェクトツリーを分解し、各オブジェクトをハッシュ付きの単位に変換してサーバへ送ります。受け取り側は、ルートの id から参照をたどって子オブジェクトを取得し、ツリーを復元(デシリアライズ)します。
この「分解して送り、参照でつなぎ直す」仕組みが、detach・ハッシュ・重複排除と組み合わさることで、大規模モデルを効率よく扱えるようになっています。
6ツール固有要素とのマッピング概念
各ツールには固有の要素概念があります。たとえば Revit には ファミリ(部材の型と実体)という独自の仕組みがあります。コネクタは、こうしたツール固有の要素を Base オブジェクトへ変換し、speckle_type と動的プロパティに情報を載せます。
- Revit のファミリインスタンスは、形状(ジオメトリ)と多数のパラメータを持つ Base オブジェクトとして表現される。
- パラメータ(寸法・材質・分類など)は動的プロパティとして保持される。
- 受け取る側のツールに同じ概念がなければ、形状とメタデータとして可能な範囲で再現される。
つまり Speckle のオブジェクトモデルは、特定ツールに依存しない「最大公約数的な構造化データ」を目指したものです。すべてを Base という単一の基底でそろえ、種類は speckle_type、追加情報は動的プロパティ、構造は親子のツリーで表す——この割り切りがあるからこそ、性質の異なる多数のツールを同じ土俵に載せられます。だからこそ コネクタ ごとに、ネイティブ要素と Base の間でどうマッピングするかが重要になります。次は実際の接続役である コネクタ を見ていきましょう。
→次に読む
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