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フェーズとデザインオプション
「いつ作られ、いつ壊されるか」という時間軸を扱うフェーズと、「どの案を採用するか」を比較するデザインオプション。混同しやすい 2 つの仕組みを整理します。
この記事の要点
- フェーズ(Phase)は時間軸上の建設段階を表し、各要素には「作成フェーズ」と「解体フェーズ」が割り当てられる
- 既定は「既存」と「新築」の 2 フェーズ。改修では要素を「既存」「解体」「新築」に分類して管理する
- ビューごとにフェーズフィルタを適用し、既存・解体・新築の表示方法を制御する
- デザインオプションは同一フェーズ内で複数の設計案を並行検討し、比較・採用する機能
- フェーズは「時間の違い」、デザインオプションは「案の違い」を扱うもので、目的が異なる
本記事は Revit カテゴリの一部です。Revit には「いつ作られ、いつ壊されるか」という時間軸を扱うフェーズと、「どの案を採用するか」を比較するデザインオプションという 2 つの仕組みがあります。混同しやすいので、それぞれの役割を整理します。
1フェーズの基本構造
フェーズ(Phase)は建設工程の段階を表します。プロジェクトには時系列に並んだフェーズが定義され(既定は「既存」→「新築」)、すべての要素には「作成フェーズ(その要素が現れる段階)」と「解体フェーズ(その要素が撤去される段階)」のプロパティが付きます。
各ビューにも「フェーズ」プロパティがあり、そのビューが「どの時点のモデルを見ているか」を決めます。たとえばビューのフェーズを「新築」にすると、新築時点で存在する要素が表示対象になります。逆に「既存」ビューでは新築要素が表示されません。1 つのモデルの中に「既存図用ビュー」「解体図用ビュー」「新築図用ビュー」をフェーズ違いで作り分けることで、同じモデルから改修の各段階の図面を一括で生み出せるのが、この仕組みの実務上の利点です。
フェーズは「プロジェクト情報」配下の「フェーズ管理」ダイアログで追加・並べ替えができます。複数回に分けて工事する場合は「第 1 期」「第 2 期」のように工期に対応するフェーズを増やし、各要素をどの工期で作られるかに割り当てて管理します。
2改修での既存・解体・新築
リノベーション(改修)では、要素を次の 3 状態で扱うのが基本です。作成フェーズと解体フェーズの組み合わせで、要素が各時点でどう扱われるかが決まります。
作成フェーズが「既存」で、解体されずに残る要素。
作成フェーズが「既存」かつ解体フェーズが「新築」の要素。取り壊す壁などが該当。解体ツール(ハンマー)で要素をクリックして指定する。
作成フェーズが「新築」の要素。改修で新たに追加される部分。
3フェーズフィルタと表示
フェーズフィルタ(Phase Filter)は、ビューのフェーズを基準に各要素を「新規」「既存」「解体」「一時的」のどのカテゴリで表示するかを定義します。たとえば「すべて表示」フィルタでは、既存要素はグレーの細線、解体要素は破線、新築要素は通常表示、といった具合に区別できます。
表示スタイルは「フェーズ」設定の「グラフィック上書き」タブで定義し、線種・色・塗りつぶしをカテゴリ(新規/既存/解体/一時)ごとに設定します。これにより、改修図面で「残すもの」「壊すもの」「作るもの」を一目で区別できます。
4デザインオプションによる案比較
デザインオプション(Design Options)は、同じフェーズ内で複数の設計案を並行して検討する機能です。たとえばエントランス周りを「案 A(吹き抜け)」「案 B(2 層分割)」で比較したい場合に使います。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| オプションセット | 検討対象のまとまり(例:「エントランス案」)。その中に複数の「オプション(案 A/案 B)」を作る。 |
| プライマリ(主)オプション | 既定で表示・集計される案。後で別の案を主に昇格できる。 |
| メインモデル | どのオプションにも属さない共通部分。オプションに含めた要素だけが案ごとに切り替わる。 |
| 採用 | 検討が終わったら主オプションを「採用(Accept Primary)」してデザインオプションを解消し、その案をメインモデルに統合する。 |
ビューやシートごとに表示するオプションを指定できるため、同じ図面枠で複数案を並べたプレゼン資料も作れます。
フェーズが「時間の違い(いつ作られ、いつ壊されるか)」を扱うのに対し、デザインオプションは「同時点での案の違い(どの案にするか)」を扱う、と覚えておくと混同しません。
5集計表への影響
フェーズとデザインオプションは、図面の見た目だけでなく集計表(スケジュール)にも影響します。集計表にも「フェーズ」プロパティがあり、指定したフェーズ時点で存在する要素だけが集計されます。たとえば「新築フェーズ」の建具表を作れば、新たに設置する建具だけが拾われ、既存・解体分は除外できます(→ スケジュール表(集計表))。
デザインオプションについても、集計表は既定で「主オプション(プライマリ)」の要素を集計します。各案の数量・面積を比較したい場合は、ビューやスケジュールごとに表示するオプションを切り替えることで、案ごとの数量根拠を別々に出力できます。プレゼン時の概算比較に有効です。
6運用上の注意
フェーズとデザインオプションは強力ですが、設定ミスが図面・集計の誤りに直結します。実務でよくある注意点を挙げます。
- ビューのフェーズ設定の確認:「要素が表示されない」というトラブルの多くは、ビューのフェーズやフェーズフィルタが意図と合っていないことが原因。まずビューのフェーズ設定を確認する。
- 解体は専用ツールで:既存要素を「消す」のではなく「解体」する場合は、削除せず解体ツールで解体フェーズを指定する。単純削除すると改修前後の整合が取れなくなる。
- オプションの増やしすぎに注意:デザインオプションを多用するとモデルが複雑になり管理が難しくなる。検討が固まった案は早めに「採用」してメインモデルへ統合する。
- リンクモデルとの併用:リンクされたモデルのフェーズと自モデルのフェーズの対応(フェーズマッピング)を確認しないと、リンク要素の表示がずれることがある(→ リンクと座標連携)。
1 つのモデルに「時間」と「分岐」を持たせる発想
フェーズとデザインオプションは、いずれも 1 つのモデルに複数の状態を共存させる仕組みです。フェーズは要素に「いつ現れ、いつ消えるか」という時間属性を与え、デザインオプションは「どの案に属するか」という分岐属性を与えます。各要素がこうした属性を持つからこそ、ビュー側でフィルタすれば「既存図」「新築図」「案 A」「案 B」を 1 つのモデルから取り出せます。状態ごとにファイルを分けずに済むのが、データとして管理する大きな利点です。
「要素が表示されない」トラブルの多くは、このフィルタ条件とビューの設定がかみ合っていないことが原因です。属性とフィルタの関係を意識すると原因を切り分けやすくなります。
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