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1棟を支える3つの視点
1つの建物は「意匠・構造・設備」という3つの視点から同時に設計されます。それぞれが何を担い、どう役割分担し、データ(BIM)の上ではどう分かれるのかを整理します。
この記事の要点
- 建築設計は意匠・構造・設備の3分野に大きく分かれて役割分担する
- 意匠は空間・デザイン・法規、構造は安全と力の流れ、設備は電気・給排水・空調(MEP)を担う
- 大規模物件では各分野に別々の専門設計者が付き、互いに整合をとる
- BIM では分野ごとにモデルを分けて作り、後で重ね合わせて干渉を検証する
建築入門 の中でも、設計実務の構造を理解するうえで最も重要なのが「3分野」の考え方です。1つの建物は、意匠・構造・設備という3つの視点から同時に設計され、それぞれに担当者がいます。まずは各分野が何を受け持つのかを見ていきましょう。
13分野の全体像
同じ建物を見ていても、3分野は注目するポイントが異なります。意匠は「どんな空間か」、構造は「どう立ち続けるか」、設備は「どう動かすか」を担います。
- 見た目・空間構成・使い勝手
- 建築全体のとりまとめ役
- 法規適合のチェックを主導
- 地震・風・自重に耐える計画
- 柱・梁・基礎などを配置・計算
- 力を地盤まで安全に伝える
- 建物を「動かす」インフラ
- 電気・空調・給排水を担当
- 配管・ダクトが各所を走る
2意匠 — デザイン・空間・法規
意匠(いしょう)は、建物の見た目・空間構成・使い勝手を決める分野です。間取り、外観、内装、開口部の位置などを計画し、建築全体の取りまとめ役(総合調整)も担います。
意匠担当は同時に法規のチェックも主導します。容積率・建ぺい率、避難経路、採光・換気の基準など、建築基準法をはじめとする多くの法令に建物を適合させる役割です。設計から竣工までの流れ における確認申請は、この適合性を行政または検査機関が確認する手続きです。
3構造 — 安全と力の流れ
構造は、建物が自重・積載荷重・地震・風などの力に対して安全に立ち続けられるよう計画する分野です。柱・梁・耐力壁・基礎などの部材を、力の流れ(鉛直方向の重さと水平方向の揺れ)が地盤まで安全に伝わるように配置・計算します。
| 主な構造種別 | 主材料 | 特徴 |
|---|---|---|
| 木造(W造) | 木材 | 戸建住宅などに多い |
| 鉄骨造(S造) | 鋼材 | 中低層のビル・工場に多い |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 鉄筋+コンクリート | マンション・中層建築に多い |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 鉄骨+RC | 高層・大規模建築に多い |
構造分野では、部材の寸法や接合部に正確な数値が求められます。BIM 上でも構造部材は「材質」「断面」「強度」などの属性を持つデータとして表現され、形だけでなく性能の情報も一緒に管理できる点が特徴です。
4設備 — 電気・給排水・空調(MEP)
設備は、建物を「動かす」インフラを担う分野です。英語の Mechanical(機械=空調・換気)、Electrical(電気)、Plumbing(配管=給排水・衛生)の頭文字から MEP と総称されます。
設備はダクトや配管が天井裏・壁内を縦横に走るため、構造部材や他系統と物理的にぶつかりやすく、次に述べる干渉検証の主役になります。詳細は 建築設備(MEP)とは を参照してください。
5各分野の担当者
小規模な物件では1人の建築士が全体を兼ねることもありますが、規模が大きくなると分野ごとに専門の設計者が分担します。一般に意匠設計者が全体をまとめ、構造設計者・設備設計者がそれぞれの計算と図面を担当します。建築士の種類と業務 で触れるとおり、構造設計・設備設計には別途の専門資格制度もあります。
戸建住宅などは1人の建築士が意匠・構造・設備をまとめて担うことがある
ビルや特殊用途では各分野に専門の設計者が付き、整合をとりながら進める
なぜ BIM はモデルを分野ごとに分けるのか
BIM では、意匠(A)・構造(S)・設備(M/E/P)のモデルを分野ごとに分けて作成し、後で1つの座標系に重ね合わせる「フェデレーション(統合)」を行います。重ね合わせたうえで、たとえば「ダクトが梁を貫通していないか」といった干渉チェック(クラッシュ検出)を行うのが BIM の代表的な価値の1つです。
モデルが分野ごとに分かれているのは、この3分野の役割分担に根ざしています。Revit では分野ごとに別ファイルでモデルを作り、リンクして参照し合う運用が一般的で、Speckle のようなプラットフォームを使うと分野間・ツール間でモデルデータをやり取りしやすくなります。
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