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建物を「使える」ものにする、見えない仕組み
建物は骨組み(構造)と空間の構成(意匠)だけでは成り立ちません。冷暖房・照明・水道・トイレ・換気など、人が快適かつ安全に過ごすための仕組みが必要です。これらをまとめた建築設備=MEPの意味と分類、設備設計の役割を整理します。
この記事の要点
- MEPは Mechanical(機械・空調)・Electrical(電気)・Plumbing(給排水衛生)の頭文字
- 建物を人が快適・安全に使うために必要な「設備」の総称
- 意匠・構造とは別に、設備設計者が空調・電気・配管などを設計する
- 設備は天井裏・床下・PS(パイプスペース)などに収まり、空間の取り合いがシビア
- BIMでは設備もモデル化され、ダクト・配管・電気経路がオブジェクトになる
人が中で快適かつ安全に過ごすための仕組みをまとめて建築設備と呼び、英語圏では MEP と総称します。BIMの分野では設備を扱うことを MEP と呼ぶことが多く、用語として押さえておくと役立ちます。この記事は 構造・材料・設備 カテゴリの一部として、MEPの意味と分類、設備設計の役割を整理します。
1MEPとは ― 3つの分野
MEP は次の3分野の頭文字です。建物の温熱環境・電力・水まわりという、生活と業務の基盤を3つで分担しています。
- 空調・換気・ダクト・熱源など
- 空気と熱を扱う設備
- 受変電・配線・照明・コンセント
- 通信・防災設備
- 給水・給湯・排水
- 衛生器具・ガスなど水まわり
Mechanical は本来「機械」を指しますが、建築の文脈では空調・換気を中心とした分野を表すことが多い言葉です。日本語では「設備」を、空調・衛生をまとめた「機械設備」と「電気設備」に大別して呼ぶこともあります。
2設備の分類
もう少し具体的に分けると、設備には次のようなものがあります。
| 設備 | 主な内容 |
|---|---|
| 空調設備 | 冷暖房、空気の温度・湿度の調整。エアコンや空調機、それらをつなぐダクトなど |
| 換気設備 | 新鮮な外気の取り入れと、汚れた空気の排出 |
| 給排水衛生設備 | 水の供給(給水・給湯)、使った水の排水、トイレ・洗面などの衛生器具 |
| 電気設備 | 電力の受け入れ・分配、照明、コンセント |
| 情報通信設備 | 電話・LAN・Wi-Fi などの通信インフラ |
| 防災設備 | 火災報知器、スプリンクラー、非常照明、誘導灯など、安全を守る設備 |
| 昇降設備 | エレベーター・エスカレーターなど |
これらは建物の用途や規模によって必要なものが変わります。大規模なオフィスや病院ほど設備の種類と量が増え、空間に占める割合も大きくなります。病院やデータセンターのように設備への要求が高い建物では、設備が建物の性能を左右する中心的な要素になることもあります。
3設備設計の役割
建物の設計は、3つの分野が分担して進めます。それぞれが何を決めるのかを整理しましょう。
設備設計者は、必要な能力の機器を選び(たとえば部屋の広さや人数に見合う空調能力を計算し)、ダクトや配管・配線をどこに通すかを計画します。設備は天井裏・床下・PS(パイプスペース=配管を縦方向に通すための空間)・EPS(電気用のスペース)などの限られた場所に収める必要があり、意匠・構造との取り合い(互いの位置関係の調整)が設計の大きなテーマになります。天井懐(天井裏の高さ)が足りないと、必要なダクトや配管が通せないといった問題も起こります。
設備モデル ― 形だけでなく系統も持つ
BIMでは設備もモデル化されます。ダクト・配管・電気のルートが立体的なオブジェクトとして作られ、口径やサイズ、ルート、接続先、勾配(排水管などの傾き)といった情報を持ちます。これにより、設備が梁や他の設備とぶつからないかを立体的に確認でき、機器の数量やケーブル・配管の長さといったデータも集計できます。設備は天井裏などの見えない空間で他分野と場所を奪い合うため、平面の図面だけでは見えなかった重なりを立体で把握できる点に大きな意味があります。
また設備のオブジェクトは、ダクトや配管が互いに接続されている関係(システム)を持てるため、どの機器からどこへ空気や水が流れるのかという系統を、つながった経路として扱えます。数量集計や系統図の作成にも活かせます。
設備モデルを意匠・構造モデルと重ねて衝突を確認する仕組みについては、設備とBIM(干渉チェック) で詳しく説明します。
→次に読む
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