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LOD と LOI ― 詳細度と情報量
BIM 要素を「どこまで作り込むか」を表すのが LOD、「どんな属性をどこまで揃えるか」を表すのが LOI です。両者を混同しないこと、そしてフェーズに応じて段階的に上げることが、効率的な運用の鍵になります。
この記事の要点
- LOD は Level of Development(米国 AIA 由来)で、要素を「どこまで信頼して使ってよいか」を 100〜500 で示す指標
- LOD には Level of Detail(見た目の詳細度)と Level of Development(情報の確度)の二つの解釈があり混同されやすい
- LOI は Level of Information(属性情報の量・質)で、英国規格系では形状とは別の軸として定義される
- 「見た目が精密=信頼できる」ではない。形状の細かさと情報の確度は別物で、最初から最高詳細にしないのがコツ
本記事は BIMとは で触れた「フェーズごとにモデルを育てる」という考え方を、具体的な物差しとして掘り下げる回です。LOD・LOI を分けて理解すると、過剰な作り込みや情報不足を避けられます。
1LOD とは ― 詳細度・確度の指標
LOD は BIM 要素がどの程度の情報をもって作り込まれているかを段階的に表す指標です。もともとは米国の AIA(米国建築家協会)が定義した Level of Development(開発度・確度) が起点で、その要素を「どこまで信頼して意思決定に使ってよいか」を示します。一方で実務では Level of Detail(詳細度)、つまり見た目の作り込みの細かさという意味でも LOD が使われ、両者が混同されがちです。
- 形状がどれだけ細かいか
- ファイルの重さ・表示負荷に影響
- どこまで本決まりとして扱えるか
- 意思決定に使ってよいかの目安
つまり「ジオメトリの解像度」と「そのデータをどこまで確定として扱えるかの成熟度」は別物だと整理すると、混乱を避けられます。LOD は本来この後者(確度)を示すものです。
2LOD 100〜500 の段階
LOD は 100 から 500 まで、原則 100 刻みで定義されます。数字が大きいほど確度が高く、より確定した情報として扱えます。
| LOD | 概要 | 典型フェーズ |
|---|---|---|
| 100 | 概念。記号やボリュームで存在のみを示す | 企画・概念設計 |
| 200 | 概略形状。おおよその寸法・位置・数量 | 基本設計 |
| 300 | 正確な形状・寸法・位置。確定情報として使える | 実施設計 |
| 350 | 他部材との取り合い(インターフェース)まで表現 | 実施設計〜施工調整 |
| 400 | 製作・施工レベル。製作可能な詳細 | 施工・製作 |
| 500 | 竣工現況(As-Built)。維持管理向けに検証済み | 維持管理 |
LOD 350 は LOD 300 と 400 の間を埋めるために後から追加された段階で、部材どうしの取り合いを表現できる点が特徴です。
3LOI ― 情報量の指標
LOI は Level of Information(情報量) の略で、形状とは独立に「属性情報がどれだけ揃っているか」を示します。英国の BIM 規格(ISO 19650 系)では、形状の詳細度(Level of Detail)と情報の詳細度(LOI)を分けて管理する考え方が採られています。
- LOD(形状): 壁の形・寸法・取り合いがどこまで作り込まれているか。
- LOI(情報): その壁の材料・耐火性能・メーカー・型番・コストなどがどこまで揃っているか。
でもメーカー・型番は決定済み(LOI 高)。早期に仕様だけ固める場面で起こりうる。
でも属性は未入力(LOI 低)。見た目だけ作り込んだ状態で、意思決定には使えない。
形状と情報を別軸で管理することで、フェーズに応じて必要な情報だけを過不足なく定義できます。
4フェーズと詳細度の関係
BIM 運用では、設計の進行に合わせて LOD・LOI を段階的に引き上げていくのが基本方針です。企画段階で LOD 100 のボリュームから始め、実施設計で LOD 300、施工段階で LOD 400 へと深めていきます。
どのフェーズでどの要素をどの詳細度にするかは、実行計画(BEP: BIM Execution Plan)であらかじめ取り決めるのが一般的です。「段階的に上げる」という考え方が重要なのは、手戻りコストと密接に関わるからです。早期に高い詳細度で作り込むと、その後の設計変更のたびに詳細部分を作り直す手戻りが発生します。逆に必要な詳細度に達していなければ、その情報を根拠に意思決定できません。フェーズごとに「いま必要十分な詳細度」を見極めることが、効率的な BIM 運用の核心です。
また、LOD は要素の種類によっても達成すべき水準が異なります。たとえば外装の納まりは早期に LOD を上げたい一方、室内の家具は終盤まで低い詳細度で構わない、といった具合です。一律ではなく、要素ごと・フェーズごとに目標 LOD を表にして管理するのが実務的なやり方です。
5誤解されやすい点
LOD・LOI は便利な物差しですが、典型的な誤解がいくつかあります。要件を的確に定めるために、ここを押さえておきましょう。
- 「見た目が精密=信頼できる」ではない: 形状が細かくても、確度(Development)が低ければ意思決定には使えません。
- 最初から高 LOD にしない: 早期に作り込みすぎると、設計変更のたびに手戻りが膨らみます。
- LOD は要素ごとに異なってよい: モデル全体で一律にする必要はなく、重要な要素だけ先行して詳細化するのが現実的です。
- LOD と LOI は別物: 形状の細かさと情報の充実度を混同しないことが、的確な要件定義の前提です。
- LOD は規格ではなく取り決め: 定義は AIA・BIMForum など団体ごとに細部が異なるため、プロジェクトごとに「どの定義の LOD か」を明示する必要があります。
LOD・LOI は単独で使われるのではなく、実行計画(BEP)と結びついて機能します。BEP では、マイルストーンごとにどの要素をどの LOD・LOI まで仕上げるかを表形式で定義し、「この段階のモデルは何を根拠に使ってよいか」を関係者間で明確にします。干渉チェックの精度も LOD に依存し、形状が概略のうちは取り合いの細部まで検証できません。このように LOD・LOI は、フェーズ・計画・検証を貫く共通の物差しとして働きます。
この記事のまとめ
LOD は形状の詳細度と情報の確度を 100〜500 で表す指標、LOI は属性情報の量を表す指標です。両者を分けて捉え、フェーズに応じて段階的に引き上げることが効率的な BIM 運用の鍵になります。次は、ソフト間でモデルを受け渡す共通言語 IFC へ進むと、属性をどう持ち運ぶかが見えてきます。
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