5.

VLANとは|IEEE 802.1Qタグ・ブロードキャストドメイン分離・トランク/アクセス・VLAN間ルーティング

編集
この記事の要点
  • VLAN とは、1 台のスイッチや複数スイッチをまたいで、L2 のネットワークを論理的に分割する技術。
  • タグ VLAN(IEEE 802.1Q)はフレームに 4 バイトの VLAN タグを付け、どの VLAN 所属かを識別する。
  • VLAN ごとにブロードキャストドメインが分かれ、別 VLAN のブロードキャストは届かない。
  • アクセスポートは 1 つの VLAN に所属、トランクポートは複数 VLAN のタグ付きフレームをまとめて運ぶ。
  • 異なる VLAN 間の通信には L3 機器(ルータや L3 スイッチ)による VLAN 間ルーティングが必要。
  • 物理配線を変えずに部署・用途単位でネットワークを分離でき、セキュリティと管理性が向上する。

概要

VLAN(Virtual LAN, 仮想 LAN)とは、物理的な配線構成にとらわれず、スイッチ上でネットワークを論理的に分割する技術です。OSI 参照モデルではデータリンク層(レイヤ 2)の機能にあたります。本来 1 台のスイッチに接続された端末はすべて同じネットワーク(同じブロードキャストドメイン)に属しますが、VLAN を使うと、同じスイッチに挿さっていてもポートごとに別々のネットワークへ振り分けられます。

たとえば 24 ポートのスイッチで、ポート 1〜8 を「営業部 VLAN」、9〜16 を「経理部 VLAN」、17〜24 を「ゲスト VLAN」のように分けられます。物理的には 1 台のスイッチでも、論理的には 3 つの独立したネットワークとして振る舞います。配線を引き直さずに、部署や用途ごとのネットワーク分離を実現できるのが VLAN の大きな利点です。

仕組み

複数のスイッチをまたいで同じ VLAN を扱うために、フレームに「どの VLAN に属するか」を示す情報を埋め込みます。この標準が IEEE 802.1Q(タグ VLAN)です。イーサネットフレームの送信元 MAC アドレスの直後に 4 バイトの VLAN タグを挿入し、その中の 12 ビットの VLAN ID(1〜4094)で所属 VLAN を識別します。

802.1Q タグ付きフレームの構造
┌──────────┬──────────┬─────────────┬──────┬─────┬─────┐
│ 宛先 MAC │ 送信元MAC│ 802.1Q タグ │ Type │ データ│ FCS │
└──────────┴──────────┴─────────────┴──────┴─────┴─────┘
                       └─ TPID(0x8100) + VLAN ID 等 4 byte ─┘

スイッチのポートには 2 つのモードがあります。アクセスポートは 1 つの VLAN だけに所属し、端末(PC・プリンタなど)を接続します。端末はタグの存在を意識せず、スイッチがポートの設定に基づいて VLAN を割り当てます。トランクポートは複数 VLAN のフレームをタグ付きでまとめて運ぶポートで、スイッチ間やスイッチとルータの接続に使います。トランクを通ることで、複数 VLAN を 1 本のケーブルで相互接続できます。

VLAN とトランクのイメージ
[PC営業] ─access(VLAN10)─┐
                          ├─[SW1]══trunk(VLAN10,20 タグ付き)══[SW2]─┐
[PC経理] ─access(VLAN20)─┘                                          ├access─[PC経理2]
                                                                     (VLAN20)

異なる VLAN は別のブロードキャストドメインなので、VLAN 10 の端末から VLAN 20 の端末へは、L2 のままでは通信できません。両者をつなぐには L3 機器(ルータまたは L3 スイッチ)を経由するVLAN 間ルーティングが必要です。

設定・実用例

Cisco スイッチでの VLAN 設定とトランク設定の例です。

# VLAN を作成
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name Eigyo
Switch(config)# vlan 20
Switch(config-vlan)# name Keiri

# ポートをアクセスポートとして VLAN10 に割り当て
Switch(config)# interface GigabitEthernet0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10

# ポートをトランクにして VLAN10,20 を許可
Switch(config)# interface GigabitEthernet0/24
Switch(config-if)# switchport mode trunk
Switch(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20

# VLAN 間ルーティング(ルータオンアスティック / サブインタフェース)
Router(config)# interface GigabitEthernet0/0.10
Router(config-subif)# encapsulation dot1Q 10
Router(config-subif)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0

# 確認
Switch# show vlan brief

最後の VLAN 間ルーティングは「ルータオンアスティック」と呼ばれる構成で、1 本のトランクをサブインタフェースに分割し、各 VLAN にゲートウェイ IP を割り当てています。L3 スイッチを使う場合は SVI(interface vlan 10)に IP を設定する方法が一般的です。

主な用途

  • 部署・用途ごとのネットワーク分離 — 営業・経理・開発などを論理的に分け、配線変更なしで再編できます。
  • セキュリティ境界の設定 — VLAN 単位でアクセス制御を適用し、ゲスト Wi-Fi を社内ネットから隔離するなどに使います。
  • ブロードキャストの抑制 — ドメインを小さく保ち、ブロードキャストによる帯域・負荷の無駄を減らします。
  • 音声 VLAN — IP 電話と PC のトラフィックを分離し、音声に優先制御をかけます。

関連技術との比較

項目VLAN(論理分割)物理的なネットワーク分割サブネット(L3 分割)
動作レイヤデータリンク層(L2)物理層ネットワーク層(L3)
分割の手段スイッチの設定(タグ)別々の機器・配線IP/サブネットマスク
配線変更不要必要不要
分離の単位ブロードキャストドメイン物理機器IP ネットワーク
相互通信VLAN 間ルーティングが必要ルータ接続が必要ルーティングで可能

注意点・落とし穴

  • VLAN とサブネットの対応 — 通常 1 VLAN に 1 サブネットを対応させます。同一 VLAN に複数サブネットを混在させると管理が複雑になります。
  • トランクの許可 VLAN 設定漏れ — トランクで許可する VLAN を絞りすぎると必要な通信が落ち、緩めすぎると不要な VLAN まで流れます。
  • ネイティブ VLAN の不一致 — トランク両端でネイティブ VLAN(タグなしフレームの扱い)が食い違うと、誤った VLAN へフレームが漏れる恐れがあります。
  • VLAN ホッピング攻撃 — 設定の甘いポートを悪用して別 VLAN へ侵入される攻撃があり、不要ポートのアクセス VLAN 固定や DTP 無効化で対策します。
  • VLAN 間通信の失念 — VLAN を分けただけでは別 VLAN へ通信できません。L3 機器によるルーティング設計を忘れないこと。

関連リンク

編集
Post Share
子ページ

子ページはありません

同階層のページ
  1. ルーティングの基礎
  2. デフォルトゲートウェイ
  3. 静的ルーティング
  4. 動的ルーティング(RIP/OSPF/BGP)
  5. VLAN
  6. スパニングツリープロトコル(STP)

最近更新/作成されたページ