| この記事の要点 |
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概要
MAC アドレスフィルタリングは、ネットワーク機器 (主に無線 LAN のアクセスポイントや一部のスイッチ) で「接続を許可する機器の MACアドレス をあらかじめ登録しておき、それ以外の機器の接続を拒否する」アクセス制御手法です。各 NIC が持つ MAC アドレスを識別子として使い、家庭やオフィスの無線 LAN で「知らない機器を勝手に繋がせない」ための簡易的な制限としてよく紹介されます。
仕組み
方式は大きく 2 つあります。
- 許可リスト (ホワイトリスト) 方式: 登録された MAC アドレスを持つ機器だけ接続を許可し、未登録はすべて拒否する。最もよく使われる。
- 拒否リスト (ブラックリスト) 方式: 登録された MAC アドレスだけを拒否し、それ以外は許可する。特定機器を締め出す用途。
無線 LAN の場合、機器がアクセスポイントへ接続要求を送ると、AP は要求元のフレームに含まれる送信元 MAC アドレスを参照し、登録リストと照合して接続可否を判定します。判定はあくまで「自己申告された MAC アドレス」に基づくため、ここに後述の限界があります。
実用例
設定はルータ/AP の管理画面で行うのが一般的です。許可したい機器の MAC アドレスは各 OS で次のように確認し、管理画面の許可リストへ登録します。
# 登録したい機器の MAC を調べる
# Linux
ip link show # link/ether 行が MAC
# Windows
getmac /v
# macOS
ifconfig en0 | grep ether
# Linux でホスト側に簡易的な L2 制限を入れる例 (ebtables)
# 指定 MAC 以外を DROP する許可リスト的設定 (高度・参考)
sudo ebtables -A INPUT -i wlan0 -s 00:11:22:33:44:55 -j ACCEPT
sudo ebtables -A INPUT -i wlan0 -j DROP
# どの MAC が接続しているか (AP/ブリッジ側) を確認
ip neigh show
bridge fdb show
一般家庭ではこれらのコマンドではなく、ルータの Web 管理画面にある「MAC アドレスフィルタリング」「アクセス制限」項目で、許可する機器の MAC を一覧入力する形になります。
主な用途
- 家庭/小規模オフィスの簡易制限: 既知の機器だけを接続させ、近隣からの偶発的接続を減らす。
- 来客機器の締め出し: 業務ネットワークに私物機器を繋がせない運用補助。
- 特定機器のブロック: 問題のある機器を拒否リストで一時的に締め出す。
- 多層防御の一枚: 暗号化・認証と組み合わせ、攻撃のハードルを少し上げる補助層として使う。
他のアクセス制御との比較
| 方式 | 強度 | 詐称耐性 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| MAC フィルタリング | 弱い | 低い (MAC は偽装可) | 補助的 |
| WPA2/WPA3 (PSK) | 中〜強 | 高い (鍵が必要) | 主たる対策 |
| 802.1X (RADIUS 認証) | 強い | 高い (個別認証) | 企業向け主対策 |
| SSID ステルス | 弱い | 低い | 補助的 |
注意点
- MAC は詐称可能: 攻撃者は無線を盗聴して許可済み機器の MAC を観測し、自分の NIC をその MAC に変更 (なりすまし) すれば容易に通過できる。MAC フィルタ単独はセキュリティ対策として頼れない。
- 暗号化の代替にならない: フィルタリングは通信内容を暗号化しない。盗聴対策には WPA2/WPA3 が必須。
- 運用コスト: 機器が増減するたびに登録/削除が必要で、規模が大きいと破綻しやすい。企業では 802.1X を使うべき。
- MAC ランダム化との衝突: 近年のスマホ/PC はプライバシー保護のため接続ごとに MAC をランダム化する。許可リスト方式だと正規端末が弾かれることがある。
- あくまで多層防御の一枚: 「やらないよりまし」程度。主たる防御 (暗号化・認証) を疎かにして MAC フィルタに依存しない。
関連リンク
運用上の位置づけと限界
MAC アドレスフィルタリングは「気休め程度のセキュリティ」と評されることが多い対策です。理由は明快で、無線 LAN のフレームは暗号化されていてもヘッダの MAC アドレスは平文で流れるため、攻撃者は airodump-ng などで通信を傍受するだけで許可済みの MAC アドレスを簡単に収集でき、その値を自分の NIC に詐称(spoofing)して認証を突破できるからです。
したがって、MAC フィルタリングは単独の防御策にしてはいけません。必ず WPA3(または WPA2-AES)による暗号化を主たる防御とし、MAC フィルタリングはあくまで「カジュアルな接続を一段階だけ面倒にする補助」と位置づけます。企業ネットワークでは MAC フィルタリングではなく、IEEE 802.1X による認証(証明書やユーザ ID/パスワード)を採用するのが本筋です。
運用負荷の面でも、端末が増減するたびに許可リストを手動更新する必要があり、台数が多い環境では現実的ではありません。BYOD(私物端末の持ち込み)が一般化した現在では、MAC ベースの管理はますます機能しにくくなっています。
子ページはありません
- MACアドレスの構造
- MACアドレスフィルタリング
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