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静的ルーティングとは|ip route addでの手動設定・メリット/デメリット・フローティングスタティック

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この記事の要点
  • 静的ルーティングとは、管理者がルーティングテーブルに経路を手動で 1 つずつ設定する方式。
  • ip route add(Linux)や ip route コマンド(Cisco)で「宛先ネットワーク+ネクストホップ」を登録する。
  • 小規模で構成変化の少ないネットワークに向き、設定が単純で挙動が予測しやすい。
  • メリットは予測可能・低負荷・帯域消費ゼロ。デメリットは保守負荷と障害時に手動切替が要る点。
  • フローティングスタティックは、AD 値を高くした予備の静的経路で主経路の障害時に発動させる手法。
  • 規模が大きく経路が頻繁に変わる環境では動的ルーティングの方が適している。

概要

静的ルーティング(スタティックルーティング)とは、ネットワーク管理者がルータのルーティングテーブルに経路を手動で 1 件ずつ設定する方式です。「この宛先ネットワーク宛てのパケットは、このネクストホップへ送る」という対応関係を、人間が明示的に書き込みます。ルータ同士が自動で経路情報をやり取りする動的ルーティングと対になる概念です。

静的ルーティングは、構成が小規模で変化の少ないネットワークに向いています。設定がそのまま動作になるため挙動が読みやすく、余計な制御通信が一切流れません。一方で、ネットワーク構成が変わるたびに人手で設定を直す必要があり、規模が大きくなるほど保守の負担が増えていきます。実務では、すべてを静的にするのではなく、デフォルト経路や特定の固定経路だけを静的に設定し、残りを動的ルーティングに任せる併用が一般的です。

仕組み

静的経路は「宛先ネットワーク / サブネットマスク / ネクストホップ(または出力インタフェース)」の組で定義します。ルータはパケットを受け取ると、通常のルーティングと同じくロンゲストマッチで経路を選びますが、その候補となるエントリが管理者の手で固定登録されている、という点が静的ルーティングの特徴です。

静的経路の構成要素
┌─────────────────┬──────────────────┬─────────────────┐
│ 宛先ネットワーク │ サブネットマスク │ ネクストホップ  │
├─────────────────┼──────────────────┼─────────────────┤
│ 10.2.0.0        │ /16              │ 172.16.0.2      │
│ 0.0.0.0 (default)│ /0               │ 203.0.113.1     │
└─────────────────┴──────────────────┴─────────────────┘

静的経路にはアドミニストレーティブディスタンス(AD)という優先度の概念があり、Cisco では静的経路の AD は既定で 1 と非常に高い優先度(値が小さいほど優先)です。この AD を意図的に大きく設定した予備経路をフローティングスタティックルートと呼びます。普段は AD の小さい主経路(動的ルートなど)が使われ、主経路が消えたときだけフローティング経路がテーブルに浮かび上がって発動します。これにより、シンプルなバックアップ経路を実現できます。

設定・実用例

Linux と Cisco IOS での静的経路の設定例です。

# Linux: 静的経路を追加(10.2.0.0/16 は 172.16.0.2 経由)
$ sudo ip route add 10.2.0.0/16 via 172.16.0.2

# Linux: デフォルト経路を静的に設定
$ sudo ip route add default via 203.0.113.1

# 確認と削除
$ ip route show
$ sudo ip route del 10.2.0.0/16

# Cisco IOS: 静的経路(宛先ネットワーク マスク ネクストホップ)
Router(config)# ip route 10.2.0.0 255.255.0.0 172.16.0.2

# Cisco IOS: フローティングスタティック(AD を 200 に上げた予備経路)
Router(config)# ip route 10.2.0.0 255.255.0.0 172.16.0.6 200

最後の例では、AD = 200 の経路は主経路(より小さい AD)が生きている間はテーブルに載りません。主経路が障害で消えた瞬間に有効化され、自動的にバックアップへ切り替わります。

主な用途

  • 小規模ネットワーク — 拠点が少なく構成が固定的な環境では、静的設定が最もシンプルで確実です。
  • デフォルト経路の設定 — インターネット向けの出口を 1 本の静的経路で指定するのは定番の使い方です。
  • スタブネットワーク — 出口が 1 つしかない末端ネットワークでは、動的プロトコルを動かす必要がありません。
  • バックアップ経路 — フローティングスタティックで動的経路の予備を用意します。
  • 特定経路の固定 — セキュリティや帯域の都合で、ある宛先だけ決まった経路を通したいときに使います。

関連技術との比較

項目静的ルーティング動的ルーティング
経路の設定方法管理者が手動プロトコルが自動学習
障害時の切替手動(フローティングで自動化可)自動で再収束
制御トラフィックなし(帯域消費ゼロ)経路交換のため発生
CPU/メモリ負荷低い相対的に高い
規模への適性小規模向け中〜大規模向け
予測可能性高い(設定どおり)状況により変動

注意点・落とし穴

  • 構成変更への追従漏れ — ネットワーク構成を変えたのに静的経路の更新を忘れると、通信不能やブラックホールが発生します。
  • 戻りの経路を忘れがち — 行きの経路だけ設定して帰りを忘れると、片方向だけ通らない厄介な障害になります。両端のルータに設定が要ります。
  • ネクストホップの到達性 — 指定したネクストホップに直接到達できなければ、その静的経路は無効です。
  • 規模拡大での破綻 — 拠点が増えると設定数が爆発的に増え、人手での管理が現実的でなくなります。早めに動的ルーティングへの移行を検討します。

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