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| この記事の要点 |
|
概要
静的ルーティング(スタティックルーティング)とは、ネットワーク管理者がルータのルーティングテーブルに経路を手動で 1 件ずつ設定する方式です。「この宛先ネットワーク宛てのパケットは、このネクストホップへ送る」という対応関係を、人間が明示的に書き込みます。ルータ同士が自動で経路情報をやり取りする動的ルーティングと対になる概念です。
静的ルーティングは、構成が小規模で変化の少ないネットワークに向いています。設定がそのまま動作になるため挙動が読みやすく、余計な制御通信が一切流れません。一方で、ネットワーク構成が変わるたびに人手で設定を直す必要があり、規模が大きくなるほど保守の負担が増えていきます。実務では、すべてを静的にするのではなく、デフォルト経路や特定の固定経路だけを静的に設定し、残りを動的ルーティングに任せる併用が一般的です。
仕組み
静的経路は「宛先ネットワーク / サブネットマスク / ネクストホップ(または出力インタフェース)」の組で定義します。ルータはパケットを受け取ると、通常のルーティングと同じくロンゲストマッチで経路を選びますが、その候補となるエントリが管理者の手で固定登録されている、という点が静的ルーティングの特徴です。
静的経路の構成要素
┌─────────────────┬──────────────────┬─────────────────┐
│ 宛先ネットワーク │ サブネットマスク │ ネクストホップ │
├─────────────────┼──────────────────┼─────────────────┤
│ 10.2.0.0 │ /16 │ 172.16.0.2 │
│ 0.0.0.0 (default)│ /0 │ 203.0.113.1 │
└─────────────────┴──────────────────┴─────────────────┘
静的経路にはアドミニストレーティブディスタンス(AD)という優先度の概念があり、Cisco では静的経路の AD は既定で 1 と非常に高い優先度(値が小さいほど優先)です。この AD を意図的に大きく設定した予備経路をフローティングスタティックルートと呼びます。普段は AD の小さい主経路(動的ルートなど)が使われ、主経路が消えたときだけフローティング経路がテーブルに浮かび上がって発動します。これにより、シンプルなバックアップ経路を実現できます。
設定・実用例
Linux と Cisco IOS での静的経路の設定例です。
# Linux: 静的経路を追加(10.2.0.0/16 は 172.16.0.2 経由)
$ sudo ip route add 10.2.0.0/16 via 172.16.0.2
# Linux: デフォルト経路を静的に設定
$ sudo ip route add default via 203.0.113.1
# 確認と削除
$ ip route show
$ sudo ip route del 10.2.0.0/16
# Cisco IOS: 静的経路(宛先ネットワーク マスク ネクストホップ)
Router(config)# ip route 10.2.0.0 255.255.0.0 172.16.0.2
# Cisco IOS: フローティングスタティック(AD を 200 に上げた予備経路)
Router(config)# ip route 10.2.0.0 255.255.0.0 172.16.0.6 200
最後の例では、AD = 200 の経路は主経路(より小さい AD)が生きている間はテーブルに載りません。主経路が障害で消えた瞬間に有効化され、自動的にバックアップへ切り替わります。
主な用途
- 小規模ネットワーク — 拠点が少なく構成が固定的な環境では、静的設定が最もシンプルで確実です。
- デフォルト経路の設定 — インターネット向けの出口を 1 本の静的経路で指定するのは定番の使い方です。
- スタブネットワーク — 出口が 1 つしかない末端ネットワークでは、動的プロトコルを動かす必要がありません。
- バックアップ経路 — フローティングスタティックで動的経路の予備を用意します。
- 特定経路の固定 — セキュリティや帯域の都合で、ある宛先だけ決まった経路を通したいときに使います。
関連技術との比較
| 項目 | 静的ルーティング | 動的ルーティング |
|---|---|---|
| 経路の設定方法 | 管理者が手動 | プロトコルが自動学習 |
| 障害時の切替 | 手動(フローティングで自動化可) | 自動で再収束 |
| 制御トラフィック | なし(帯域消費ゼロ) | 経路交換のため発生 |
| CPU/メモリ負荷 | 低い | 相対的に高い |
| 規模への適性 | 小規模向け | 中〜大規模向け |
| 予測可能性 | 高い(設定どおり) | 状況により変動 |
注意点・落とし穴
- 構成変更への追従漏れ — ネットワーク構成を変えたのに静的経路の更新を忘れると、通信不能やブラックホールが発生します。
- 戻りの経路を忘れがち — 行きの経路だけ設定して帰りを忘れると、片方向だけ通らない厄介な障害になります。両端のルータに設定が要ります。
- ネクストホップの到達性 — 指定したネクストホップに直接到達できなければ、その静的経路は無効です。
- 規模拡大での破綻 — 拠点が増えると設定数が爆発的に増え、人手での管理が現実的でなくなります。早めに動的ルーティングへの移行を検討します。
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