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EOT(.eot)|IE 専用 Web フォント、ドメインロックと EOT 廃止の歴史

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この記事の要点
  • EOT(Embedded OpenType)は Microsoft が 1996 年頃に策定し、Internet Explorer 4.0(1997)から IE11(2013)まで 専用にサポートされた Web フォント形式
  • 拡張子は .eot。TrueType / OpenType に MTX 圧縮と ドメインロック(rootstring)を追加した IE 専用ラッパー
  • Microsoft 独自で W3C 勧告にならず、IE 以外のブラウザは一切対応せず(Firefox / Chrome / Safari / Opera すべて拒絶)
  • 当時の目的は「商用フォントの Web 配信時にドメインで使用を縛り、不正コピーを防ぐ」こと。フォント業界の合意は得られなかった
  • 2018 年に Microsoft 自身が公式に EOT は時代遅れ と表明。WOFF / WOFF2 に置き換わった
  • 2022 年 6 月の IE サポート終了で 事実上完全に役目を終えた。新規サイトで EOT を配信する理由はゼロ
  • 歴史的資料・古いイントラネット(Windows 7 + IE11 等)保守を除き、現代の Web 制作で扱う必要はない

概要

EOT(Embedded OpenType、エンベデッドオープンタイプ)は、Microsoft が 1996 年頃に策定した Internet Explorer 専用の Web フォント形式です。IE4.0(1997 年)から実装され、IE5・IE6・IE7・IE8・IE9・IE10・IE11 と、IE シリーズすべてでサポートされた一方、他社ブラウザは一度も対応しませんでした。拡張子は .eot。実体は TrueType / OpenType(SFNT)に Microsoft の MTX 圧縮ドメインロック(rootstring)機能を追加した独自ラッパーです。

EOT が生まれた背景には、1990 年代後半の Web フォント事情があります。当時、フォントは Microsoft や Adobe のような専門ベンダから高額で買うのが普通で、それをそのまま Web に置くと不正コピーされる懸念がありました。Microsoft はこれを解決するために「EOT は指定された URL からしか読み込めない」というドメインロック機能を埋め込み、フォントベンダに「Web 配信しても安全ですよ」と訴求しました。しかしこの仕組みは Microsoft 独自 であり、Mozilla・Apple・Opera・Google といった他社ブラウザベンダはセキュリティ・プライバシー・標準化の観点から採用を拒否しました。

結果として EOT は IE 専用のまま 15 年以上孤立し、2009 年に Mozilla 主導で WOFF が登場すると一気に存在意義を失います。WOFF は EOT のような独自ドメインロックを持たず、CORS とライセンス契約で配信を制御するという「標準化されたやり方」で同じ問題を解決し、2012 年に W3C 勧告となりました。Microsoft 自身も EOT を W3C にメンバー提出(2008 年)しましたが標準化されず、最終的に Microsoft は WOFF / WOFF2 への移行を選びました。

2018 年には Microsoft が公式に「EOT は時代遅れであり、WOFF / WOFF2 を使うべき」と表明し、2022 年 6 月の IE 完全引退によって EOT の実用的な役目は終わりました。2026 年現在、新規サイトで EOT を配信する理由はまったくありません。古いイントラネット(Windows 7 / Windows 8 + IE11 のままの社内システム)の保守作業や、歴史的資料調査の際にだけ目にするレガシー形式として扱うのが適切です。

内部構造

セクション役割
EOT ヘッダマジック値、SFNT 全体サイズ、フォント名、ファミリ名 (UTF-16LE)
RootStringドメインロック用 URL リスト(https://example.com 等)
MTX 圧縮データMicrosoft 独自の MicroType Express 圧縮で埋め込まれた TTF/OTF 本体
フラグサブセット化済みかどうか、暗号化されているか 等

RootString が設定された EOT は、その URL 以外のページから参照されると IE が拒絶します。これがドメインロックの核ですが、IE 以外はそもそも EOT を読まないので、ブラウザシェアの変化とともに意味を失いました。

主な用途(歴史的)と CSS 設定

EOT を @font-face で読み込む古典的な CSS(IE6〜8 を支える「Bulletproof @font-face syntax」)は次のような形でした。Paul Irish が 2009〜2011 年に提案したテクニックで、当時の Web フォント実装者にとっての必修知識でした。

@font-face {
  font-family: "MyFont";
  /* IE9 以降の互換モード用:?#iefix で IE6-8 の解釈を欺く */
  src: url("myfont.eot");
  src: url("myfont.eot?#iefix") format("embedded-opentype"),
       url("myfont.woff2")         format("woff2"),
       url("myfont.woff")          format("woff"),
       url("myfont.ttf")           format("truetype");
}

この記法は「IE9 が src リスト全体をひとつの URL として誤解釈してしまうバグ」を逆手に取った職人芸でした。2026 年現在では完全に不要であり、新規 CSS にこのような形を書く必要はありません。

関連形式との比較

項目EOTWOFF / WOFF2
策定元Microsoft 独自W3C 勧告
圧縮MTX(独自)zlib / Brotli
ドメインロック○(RootString)× (CORS / EULA で制御)
対応ブラウザIE のみ主要全ブラウザ
標準化提出されたが不採択勧告済み
2026 年の立ち位置廃止扱い主流(WOFF2)

編集ツール

  • WEFT(Microsoft Web Embedding Fonts Tool、無料):Microsoft 公式の EOT 生成ツール。Windows XP 時代まで配布。現代では入手も実行も困難。
  • ttf2eot(OSS、C 実装):TTF を EOT に変換する CLI。Linux でも動く。レガシーサイト保守用。
  • FontSquirrel / Transfonter(Web、現役):今でも EOT 出力を選べるが、デフォルトでは外されつつある。

注意点・落とし穴

  • 新規プロジェクトで EOT を出力する必要はない:IE が完全に死んだ 2022 年以降、EOT 配信は純粋に容量の無駄。
  • ドメインロックは強くない:RootString は単純に URL を見るだけで、暗号学的保護はない。ファイルをコピーして自前のサーバに置けば回避できる。あくまで「お手軽な不正利用抑止」程度の効果しかなかった。
  • ライセンス上の根拠:当時の市販フォントの Web 配信権限は「EOT を使う場合のみ可」と限定されていることがあった。新しい EULA は WOFF / WOFF2 でもカバーされているはずなので、契約書を確認する。
  • 過去サイトの保守:「IE11 でだけ崩れる」と言われたら EOT の ?#iefix 構文を疑う前に、まずブラウザ要件そのものを更新できないか提案するのが現代的。
  • 歴史的価値:EOT は「ブラウザベンダ独自規格が標準化に勝てず消えた」典型例として、Web 標準史を語るうえで重要な題材。

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