この内容は古いバージョンです。最新バージョンを表示するには、戻るボタンを押してください。
バージョン:5
ページ更新者:atom
更新日時:2026-06-11 07:12:00

タイトル: 階層(レイヤ)
SEOタイトル: OSI 参照モデル 階層 (レイヤ) 完全ガイド

この記事の要点
  • OSI 参照モデルは通信機能を 7 階層 (Physical → Application) に分割した概念モデル
  • 各層は下層のサービスを使い、上層にサービスを提供する関心の分離 (Separation of Concerns)
  • 各層が扱うデータ単位は PDU (Protocol Data Unit)、層間で受け渡すのが SDU (Service Data Unit)
  • 送信時はカプセル化、受信時はデカプセル化で各層が自分のヘッダ / トレーラを付与・除去
  • TCP/IP モデルは 4 層 (Link / Internet / Transport / Application)、OSI と完全一致しないが対応関係はある

OSI 参照モデルとは

OSI 参照モデル (Open Systems Interconnection Reference Model) は、ISO が 1984 年に標準化した、ネットワーク通信の機能を 7 階層に分けて整理した概念モデルです。実装ではなく「役割の整理図」として使われ、トラブルシュート時に「どの層の問題か」を切り分ける共通言語になります。

7 階層と各層の責務

名称責務PDU代表プロトコル / 装置
L7Applicationアプリ固有の通信ルールDataHTTP / SMTP / DNS / FTP / SSH
L6Presentationデータ形式 / 文字コード / 暗号化DataTLS / ASCII / UTF-8 / JPEG
L5Sessionセッション開始・継続・終了DataNetBIOS / RPC / SIP
L4Transportエンド間の信頼性・順序・多重化Segment (TCP) / Datagram (UDP)TCP / UDP / QUIC
L3Network論理アドレス・経路選択PacketIP / ICMP / OSPF / BGP, Router
L2Data Link同一物理媒体上のフレーム転送FrameEthernet / PPP / Wi-Fi, Switch
L1Physical電気信号 / 光信号 / 電波BitUTP / 光ファイバ, Hub / NIC / 規格 RJ-45

SDU / PDU / カプセル化

各層が扱うデータ単位の呼称は次のとおり。

  • PDU (Protocol Data Unit): その層が交換するデータ単位(ヘッダ + ペイロード)
  • SDU (Service Data Unit): 上位層から渡された、まだその層のヘッダを付けていないデータ

送信側では上から下へ各層がヘッダ(必要ならトレーラ)を付ける「カプセル化」、受信側では下から上へ各層が自分のヘッダを剥がす「デカプセル化」を行います。

[送信側 カプセル化]
L7  HTTP: GET /index.html ...                                       (Data)
L4  +TCP header (port, seq)                       → TCP segment
L3  +IP header (src/dst IP)                       → IP packet
L2  +Ethernet header & trailer (MAC, FCS)         → Ethernet frame
L1                                                  → ビット列を電気信号に

[受信側 デカプセル化]
L1  電気信号 → ビット列
L2  Ethernet frame → ヘッダ確認・剥離 → IP packet
L3  IP packet → IP ヘッダ確認・剥離 → TCP segment
L4  TCP segment → TCP ヘッダ確認・剥離 → アプリ宛 Data
L7  HTTP リクエスト処理

TCP/IP モデルとの対応

実装で使われているのは OSI ではなく TCP/IP モデル。資料により 4 層モデル (RFC1122) または 5 層モデル (Tanenbaum 教科書) で説明されます。

OSI (7層)TCP/IP 5層TCP/IP 4層代表プロトコル
L7 ApplicationApplicationApplicationHTTP / DNS / SSH
L6 PresentationTLS / JSON
L5 SessionQUIC のストリーム / TLS セッション
L4 TransportTransportTransportTCP / UDP / QUIC
L3 NetworkInternetInternetIP / ICMP
L2 Data LinkData LinkNetwork Access (Link)Ethernet / Wi-Fi
L1 PhysicalPhysicalUTP / 光ファイバ

各層の責務を具体例で

  • L1 Physical: 「電圧 0V を 0、5V を 1 と解釈する」「光のパルスを ON/OFF で表現する」など、ビットを物理現象に乗せる
  • L2 Data Link: 「同じ Ethernet ケーブル / Wi-Fi 上の隣接機器との通信」を担当。MAC アドレスでフレームを宛先付け、CRC でビット誤り検出
  • L3 Network: 「異なる LAN セグメント間」の通信を担当。IP アドレスで論理宛先を表し、ルータが経路選択 (ルーティング)
  • L4 Transport: 「エンドツーエンドで信頼できる通信」。ポート番号で多重化、TCP は再送 / 順序保証 / 輻輳制御
  • L5 Session: 「論理的な会話の単位」。再開・チェックポイントなど
  • L6 Presentation: データ形式 (ASCII↔EBCDIC、JSON、XML)、文字コード、圧縮、暗号化 (TLS)
  • L7 Application: アプリ固有のメッセージ仕様 (HTTP メソッド、SMTP コマンド等)

現実のプロトコルがどこに当たるか

プロトコル主な層備考
HTTP / HTTPSL7HTTPS は L6 で TLS を使う
DNSL7UDP/53 (一部 TCP, DoT, DoH)
TLS / SSLL6 (一部 L5)HTTPS の S 部分
TCP / UDPL4QUIC は L4 + L5/L6 (TLS 内蔵)
IP (IPv4/IPv6)L3
ICMP / ARPL3 / L2.5 (議論あり)ARP は IP-MAC 解決
EthernetL21000BASE-T 等の物理は L1
Wi-Fi (802.11)L2 + L1MAC とフィジカル両方含む
USB / BluetoothL1〜L7 のスタック独自スタック

覚え方 (Mnemonic)

方向英語覚え歌意味
L1→L7Please Do Not Throw Sausage Pizza AwayPhysical/DataLink/Network/Transport/Session/Presentation/Application
L7→L1All People Seem To Need Data ProcessingApplication〜Physical

俗語: Layer 8 / Layer 9

標準外のジョーク的拡張ですが、実務でも会話に登場します。

  • Layer 8 = User(ユーザのオペレーションミス)「これ Layer 8 の問題だね」
  • Layer 9 = Politics / Money(組織内政治・予算)
  • Layer 10 = Regulation(法規制)

トラブル切り分けでの使い方

ネットワーク障害時は下層から順に切り分けるのが鉄則。

# L1: ケーブル / リンクは生きているか
ip link show eth0          # state UP / DOWN
ethtool eth0               # Link detected: yes

# L2: 隣接機器とフレームは届くか
ip neigh                   # ARP テーブル
ping -c1 192.168.1.1       # ICMP は L3 だが L2 ARP も確認

# L3: ルーティングは正しいか
ip route
traceroute 8.8.8.8

# L4: 該当ポートで TCP 接続が張れるか
nc -vz example.com 443
ss -tlnp                   # 自ホストの LISTEN

# L7: アプリケーション応答
curl -v https://example.com/

FAQ

Q: 7 階層を全部覚える意味は?
A: 実装上はほぼ TCP/IP 4-5 層で十分ですが、セキュリティ機器のスペック表 (L7 ファイアウォール)負荷分散 (L4 / L7 LB) など、業界用語が OSI 番号ベースなので、共通言語として必要です。

Q: TLS は L6 か L5 か L7 か?
A: 厳密には L6 (Presentation) が近いとされますが、SSL/TLS は OSI に厳密対応しません。HTTPS の文脈では「L4 と L7 の間の暗号化層」と説明されることが多いです。

Q: QUIC はどの層?
A: 主に L4 (Transport) ですが、TLS 1.3 を内蔵し、ストリーム多重化も持つためL4〜L6 をまたぐと言われます。RFC 9000 が仕様。